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「 皇子と姫と西国の姫君 ② 」
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行方不明のカガリを思わぬ所で見つけた皇子アスラン。

皇子と姫、つづきです♪





観月の宴―・・・

月の光の下、貴族たちが歌を詠み、琴の音を楽しむために年に数回催されている。

今回の主催は左大臣のネオ。

宮中で強い権力を誇る大臣からアスランの元へも数ヶ月前から正式な誘いがあった。

左大臣家の使者は宴が近づくと毎日アスランの元に姿を見せた。
皇子の中で唯一未婚のアスランにどうしても出席して欲しいという。

最初の誘いを受けた時点でカガリを出会っていたアスランは即座に断りの返事をした。

にも関わらず使者は一向に諦めなかった。

そして、婚約者の姫が行方不明になっているこの時も使者はアスランの元へやって来た。


「こんな時に宴に出席するわけないだろう!!」

大和家の家来を総動員して捜索にあたらせているが、2日たってもカガリの行方はいまだ掴めていない。

手がかりといえば、ここ数日“金色の髪の姫”を街で探していたという二人の少年の存在だけだった。

不安がどんどん強まっていたアスランは使者に向かって声を荒立てた。

最愛の、将来を誓い合った姫が何者かにさらわれたというのに、のんびりと月を愛でてなどいられない。

アスランは、使者を帰すようシンに指示をする。

御簾で仕切られた部屋を去ろうとすると、シンがアスランを呼び止めた。

「アスラン様、左大臣様から・・って。」

シンが使者から渡された文をアスランは粗雑に開く。
中には簡素に歌が一句詠まれていた。


‘ 月あかり 琴音に響き 暁の花咲かりけり ’














侍女に案内されて御簾で仕切られた部屋に入ると、すでに何人かの貴族が横一列に座っていた。

アスランは空いている座に腰掛けた。


「よおっ、アスラン。」

アスランの胸中と正反対の明るい声が隣から届く。そして、その隣の人物から冷静な視線がアスランに向けられる。

「兄上・・・」

アスランの隣には第4皇子のディアッカ、そしてその隣に第2皇子のレイ。
どちらの皇子もすでに正室がいる。
宴とは名ばかりで、左大臣が身内の姫を皇子たちや貴族にに披露する場なのだろう。あわよくば姫を嫁がせようと・・・

皇太子を筆頭に次々と姫を皇族に嫁がせている右大臣家に対抗するつもりなのだ。

アスランはやはり来なければ良かったと後悔した。

左大臣の意味深な文に誘われて赴いたものの、この場ではアスランの望みは叶えられそうにない。

政務以外の時間はいまだ行方不明のカガリの捜索に費やしたい。

しかし一度顔を出してすぐに退席してはあまりにも無礼だ。

仕方なく、慣れない宴の場に耐えようと覚悟を決めた。


「アスラン、なんか機嫌悪い?」

「いえ、そんなことありませんよ。」


あからさまな態度にディアッカが眉をしかめる。
いつも冷静な弟君がこうも露骨に不機嫌さを表すのは初めてではないだろうか・・・

「アスランがこんな所に来るなんて意外だな。あの可愛らしい姫にぞっこんだと思ってたけど・・・?ここにあのお姫さん以上の姫がいるとは思えない・・・」

「そういう目的で来たのではありません。」

にやにやと語りかけるディアッカの言葉を途中で遮って、アスランが小さな溜め息を吐く。

どんな美姫がいたとしても瞳に映るのは愛しい姫だけ・・・

その安否を気づかってアスランはもう一度ため息をついた。



しばらくして、御簾の向こうの広い間取りに何人かの姫が姿を現した。
煌びやかな十二単に身を包んだ姫たちは決められた位置に順番に座っていく。
どの姫もしとやかな身のこなしで優美な雰囲気を持っている。
左右に十人ずつ座ったところで最後に現れた姫が、用意されていた琴の前に座った。

するとアスランの横並びの貴族たちからほお、と感嘆の声が上がる。

琴の前に座った姫は、浅葱色の衣に身を包み、金糸を思わせる髪を少し結って、他の姫たちとはどこか違う色気を漂わせていた。



アスランもその姫の存在に気づいた。というか、姫が入室してからずっと、心を奪われたかのように無意識に目で追ってしまっていた。


いつもの、庭で戯れているような無邪気さや幼さは感じられない。


凛とした優美な雰囲気はアスランがこれまで見たこともないものだったが、探し求めている相手に間違いはなかった。


「カガリッ・・!」


ディアッカはぎょっとした。横に座っていたアスランがそう叫ぶと立ち上がって身を乗り出したのだ。

「ちょっ?!何やってるんだよ、アスランッ」

「いいから離せっ、カガリが・・」

とっさにアスランの腕を掴み動きを制したディアッカにアスランは相手が自分の兄だということも忘れたのか、焦った様子で言い放つ。

「落ち着けって!!御簾の向こうに行くなんておまえ・・」

そう言われてアスランははっと我に返る。どんな理由にせよ、男女を分かつ御簾を越えて行くことはあってはならない。

このまま向こう側のカガリの元へ走り寄ったとしたら、‘宴’の意味が無くなる。

右大臣家の宴を台無しにしたと、アスランの失態にもなりかねない。

アスランの脳裏に母のレノアや、従者のシンの顔が浮かぶ。アスランの失態は自分の繋がる多くの人々にも影響する。


アスランはぐっと拳を握ると、ゆっくりと腰を下ろした。

ディアッカもアスランの腕を離して、少し呆れた様子で言った。

「どうしちゃったんだよ、今日は変だぜ。おまえ。」

その質問には答えずにアスランはじっと前方を見つめる。


月のあかりの下でゆっくりと琴の音が流れる。

奏でられる音色にアスランは聞き覚えがあった。

出会ってまもない頃はたどたどしい手つきでお世辞にも上手いとは言えなかったカガリの琴の腕前。

が、どれほど練習したのだろう、先日聴いた時には宮中で奏でられる音色に引けをとらない程、上達していた。

『すごく上手だよ。』そう褒めたアスランにカガリは嬉しそうに笑い、続けて琴を奏でた。

その時の音色と同じ―・・・


間違いない、あれはカガリだ・・・

















『カガリッ!』

御簾の向こうから自分の名を呼ぶ声が聞こえ、カガリは伏せていた顔を少し上げて前方を見る。

一面に張られた御簾でその向こうを伺うことはできない。

何人かの公達がそこにいて自分たちを眺めていることは予想がついた。
その‘宴’で言われたとおりに振る舞うこと、何があっても自分の名を明かさないこと、それが左大臣ネオと交わした約束だった。


(今の声・・・ アスラン・・?)

皇子であるアスランは常にこういう場に姿を現しているのだろうか・・

そう思うと琴に伸びる手が震えた。

しかしすぐに優しく微笑むアスランの顔が浮かんできて、カガリの不安を取り去った。

ちがう、きっと自分を迎えに来てくれたんだ・・・


そう思うと心が落ち着いた。

スゥっと息を吐き、カガリは琴を奏で始める。

カガリの奏でる琴の音色にその場にいた人々はうっとりと聞き入った。




自分が姿を消してどれほど心配しているだろう。

でももうすぐ左大臣との約束が終わる。

この琴を弾き終われば・・・

アスランに会える。




御簾の向こうにいるであろうその人を想ってカガリは流麗に琴を奏でた。












カガリのことになると冷静さを失うアスラン・・・

大好きです。大好物~♪





むー、キーワード何にしよう。。。

『皇子錯乱』とか?!(笑)


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