「はぁ……」
キラの部屋に来たカガリはベットに座ってため息をついた。
課題をしていたキラはくるっと椅子を回して、片割れを心配する。
「どしたの?カガリ。」
「うん… 最近アスランの事が分からないんだ…」
おてんばだったカガリの悩みはまさしく恋する乙女のもので、キラは複雑な気持ちだ。
隣に住む幼なじみのアスランと自分の双子の妹がいずれ恋仲になることは予想していた。
高校生になって一年がたつ。いよいよその時が来たのか、とキラは覚悟した。
「アスランに何か言われたの?」
カガリの隣に座ったキラは曇った顔をのぞき込むように聞いた。
カガリはふるふると首を横に降った。
「…何も言わないんだ。だからわたし分からなくて…」
泣きそうな顔のカガリ。
キラはどきっとする。
いつも元気なカガリがたまに見せる弱気な姿。
なんとしても助けてあげたくなる。
「そっか… 」
しばらく考えてキラはカガリの肩にぽんと手を置いた。
「アスランも"僕"になら話してくれるかもしれないよ。」
キョトンとするカガリ…
「やるのか、アレを?…」
「久しぶりだねー まだできるかやってみようよ。」
こくん、と頷いたカガリは手を胸の前に出した。
キラがカガリの手に自分の手をそっと合わせる。
「じゃあ、いい…?」
「うん…。」
キラとカガリは目を閉じて触れている手に神経を集中させた―…
次の日、登校してくつ箱を開けたキラは靴の上に置かれた封筒を手に取る。
(やっぱりカガリ、モテるなぁ。今回も僕がはっきりと断ってあげるからね。)
まだ二人が小さいときに偶然知った自分たちの秘密。
手を合わせて意識を重ねれば、キラとカガリは心を入れ替えることができる。
昔はよく遊び心で入れ替わっていた。
大きくなってからも、カガリが赤点を取りそうな時キラと交代したり、カガリが男子とバスケがしたいと言い出して入れ替わったりした。
主にカガリを助けるため、またはカガリが望んだ時にそれをしていたが、キラにも利点はあった。
(前に替わった3日間では、5人断ったからなぁ。)
中学3年の時にキラがカガリとして、言い寄る男子生徒にはっきりと断った。
可愛い妹につく悪い虫を寄せ付けないために、キラは今回も頑張ろうと張り切っていた。
(まあ、アスランの気持ちも分からないこともないんだけどね・・)
今までずっと幼なじみをやってきたからカガリとどう接していいのか分からなくなっているんだろうと思う。
おまけにカガリは男子から人気があるし、アスランの悩みにはキラも気づいていた。
(とりあえず今日の放課後は一人、と・・・。)
キラは手紙を読むと意気揚々と教室に向かった。
********
昼休み。
教室に姿のなかったアスランを探してカガリは屋上へと来ていた。
ここまで来る間、カガリは普段しない笑顔を振りまいたために、ひどく疲れていた。
女子生徒とすれ違うたびにキャーキャーと言われて、キラのイメージを崩さないようににこっと笑顔で返したのだ。
(まったくキラはモテすぎだ・・・)
彼女がいることは学校の誰もが知ってるはずなのに、それでも人気がある。
それも彼の優しさが理由だとカガリは思った。
いつも兄のキラは自分を助けてくれる。
今回もキラが与えてくれたきっかけを無駄にしないように意気込んで、カガリは屋上のドアを開けた。
(アスラン・・・)
屋上のフェンスに寄りかかってアスランが立っていた。
空を見上げて何か考えているようだった。
「アスラン・・ どうしたの、こんなところで・・」
なるべくキラの口調になるようにカガリは話しかけた。
「キラ・・・」
「何か考えていたのか?」
「え、あ、まあな・・・」
アスランが一瞬怪訝な表情をした。
つい、いつもの自分の言葉が出てしまう。
(わっ、気をつけないと・・・)
「何か悩んでる? 僕でよかったら話してくれない?」
(こんなもんか・・?)
視線をきょろきょろと移す怪しいキラの表情に、フェンスの方に向きを変えたアスランは気づかない。
「・・・カガリを、ずっと大切に想ってきたから、いざそうなるとどうしていいのか分からないんだ・・」
「え・・・」
「カガリには何度も好きだって言ってきたし、もう俺の気持ちは伝わってる、と思う・・ でも、カガリからは何も・・・」
カガリはアスランの背中を見つめながら、昔を思い出した。
『かがり、すき』
『カガリ、好きだよ』
幼いアスランに言われた言葉が蘇る。
(バカだ、わたし・・ アスランはずっと伝えてくれてたのに・・)
大きくなるにつれてアスランがよそよそしくなったような気がしていた。
あまり話さなくなったし、二人でいることも少なくなっていた。
そして、この間、珍しく二人になった時に・・
アスランが黙って近づいてきて、ぐいっと引き寄せられた。
それから・・・
「アスラン・・・」
フェンスに向いているアスランの背中にカガリはそっと手をあてた。
さっと振り向いたアスランの胸に顔を当てる。
自分を思ってくれる気持ちを知って瞳からは自然と涙が溢れた。
「おいっ・・キラ・・」
急に親友に抱きつかれてアスランは慌てる。
しかも相手は泣いていて、アスランは何がなんだか分からない。
「ひっく・・ アス・・」
「ちょっ・・・」
アスランとキラ、男同士が近づいている時に、運悪く屋上のドアが開いた。
屋上で昼休みを過ごそうとした数人の女子生徒はすぐに二人の姿を見つけた。
「きゃぁ、ザラ先輩と・・ヤマト先輩?!」
「やだ、そういう仲だったのぉー」
泣いているカガリは、後ろのドアの生徒には気づかない。
アスランは、慌てて「違うんだっ!これはっ・・・」と叫んだが、女子生徒はあっという間に消えてしまった。
②へつづく・・・
★
ちょっと脱線・・・
リクの大人アスラン書いていたら、ドキドキしてきて続きが書けなくなりました(笑)
だから、キラカガに浮気。
昔、双子がシンクロして入れ替わる、
って漫画があったような、
無いような・・・
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