これは夢・・・?
あたたかい家で父と母と自分。
3人で笑って話している。
・・・夢だ。
こんなあたり前の光景。
俺には無かった。
だから、これは夢だ-・・
「・・・んぅ・・」
重いまぶたを開けるとくすんだ色が広がる。
思考はすぐに冴えない。
音も・・あまり感じられない空間。
ここは・・・?
重い頭と体を無理矢理起こす。
クラクラとめまいがしたが、振り払って思考をたぐり寄せた。
どこからか漏れる光。
そこに手を伸ばすと、カーテンの隙間から光が差していた。少しその空間を広げてみると、サッと眩しい光が自分に飛び込んでくる。
眩しさに顔をしかめながら、自分の居場所を確認した。
(ここは一体・・?)
どこだろう。殺風景な部屋。
家具も無い、ダンボールが数個置いてあるだけ。
自分の体には毛布がかけられている。
ふと、部屋の片隅に目をやると、毛布のかたまりがもうひとつあった。
「ん~・・・」
突然聞こえた声に体がすくんだ。
(なんだ?)
毛布のかたまりから、黄金色がはみだしている。
もぞもぞと動くそれは人間だと認識できた。
「おい・・・」
呼びかけても一向に目覚める気配は無い。
差し込む朝日が強くなって視界が鮮明になる。
幼い顔が寝息をたててすやすやと寝ている。
なんて穏やかに寝ているんだろう、自分とは違うその安らぎが少しねたましい。
「おい!起きろ。」
鋭い声にぴくっと反応して、うっすらと瞳を開けた。
「おい・・ 起きろ!」
「・・・んー?!」
片目を瞑ったままでむくっと起き上がる。
さらさらと流れる髪が朝日を受けて輝いた。
「んー、おはよ・・」
この状況で意外すぎる言葉が出てきて唖然とする。
「おはよー、じゃないだろう・・
ここはどこだ?おまえは?」
「・・・ん?!・・・あ、あー!!!!」
「やっと起きたか。で、ここはどこだ」
掛けていた毛布をさっと体に巻いて警戒される。
「・・・わたしの部屋だ。」
「おまえの?」
「そうだ。」
「なぜこんな所に・・・・。」
生徒会の話し合い・・・
迎えに来た母の車に乗って・・・
それから・・・?
「おまえっ、ドアの前に座ってるから邪魔で・・ しょうがないからここに・・・」
「・・・・・」
「憶えてないのか?」
「・・・あぁ。」
「じゃあ・・」
「ちょっと、おまえっ!!」
「なんだ?」
「もう大丈夫なのか?!」
「・・・あぁ。」
毛布に体を包んで必死に叫ぶ姿。
変な奴・・・
「ちょっとっ・・ おまえっ、何か言うことないのかよっ」
「何かって?」
「倒れていたおまえをここまで運んだんだぞ。わたしがっ・・」
わたし・・・?
女か・・?
そうか、だから毛布にくるまっているのか。
ハスキーな声で、男っぽい口調だからてっきり・・・
女の部屋となると、なおさら早く出るべきだ。
「じゃぁ。」
何も置いてない廊下は多少薄暗くてもすんなり進めた。
ドアを開けると朝日が全身に当たる―・・・
広がる景色は見慣れたもので・・
ここは・・・
マンション??
閉まったドアを改めて見ると、やはり見慣れたものだった。
プレートに書かれた番号を見て苦笑した。
「変な女・・・」
3へつづく...
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