制服のリボンを首に掛けながらカガリは部屋のドアを開けた。
時間どおりに目は覚めるのだが、その後の支度がどうも遅い。今日も遅刻ぎりぎりの時間になってしまった。
(まずいな、ちょっと急がないと・・・)
少し焦ってマンションの通路を進むと、前に見慣れた背中がある。
カガリと違ってまったく焦りのない様子に、関係ない、と何度か言われた言葉が蘇った。
休日だった昨日、隣の部屋で何かしらの話し合いが行われていた。
他人であるカガリにその内容を知る権利も筋合いもないのだが、なぜか気になって仕方がなかった。
「おはよう、アスラン。」
小走りに駆け寄ってカガリは声を掛けた。相手は、あぁ、と気のない返事をしただけだった。
「あのさ・・・、昨日、なんだったんだ?!・・あっ、わたしには関係ないとは思うけど・・気になってさ。シン・・は、前の学校で仲良かったし、おまえのことも・・」
自分でも分かっている。
他人のことだから、自分には関係ないから、何も聞かない方がいいに決まってるのに・・・
「事情はよく分からないけど・・家に帰った方が良くないか?!」
アスランの部屋で見た雑誌の記事、アスランを‘兄’と呼んだシンの言葉。
両親が離婚したからアスランは家を出た。
家には弟のシンが残るから、自分はいなくても構わない、そう思っているのではないか・・
カガリは唇を噛みしめた。
離れていい家族なんてどこにもない。
温かい存在を失った自分にはそれが良く分かる。
アスランを取り巻く環境がどんなに複雑だとしても、家があるのならそこに戻った方がいいと、そう思う。
「・・・君には関係ないだろう。」
予想した反応が返ってくる。
アスランが素直に昨日のことを教えてくれるとは思わなかった。
「関係ないっていうのは、分かってる!!だけどっ、シンだって心配してわざわざ来てるんだろ?!おまえのお母さんだってきっと心配してるはずだっ!」
カガリの口から出た‘母’という言葉にアスランは顔をしかめる。
デザイナーの母親と、政治家の父親。
数ヶ月前に離婚を決めた二人。仕事が忙しく、両親がすれ違っていたことがアスランも知っていた。
離婚を決めたのは二人で、それは両親の問題だからアスランには関係ない。自分の中ではそう整理がついていた。
しかし、実際はそうではなかった。
マスコミが家に押し寄せ、アスランにもマイクが向けられた。
学校では直接アスランに問い詰める生徒はいなかったが、ひそひそと噂をする声を毎日のように感じていた。
最近になってそんな声も聞かなくなってきたのに・・・
いまだに弟はアスランを家に呼び戻そうとするし、無関係の人間までも家に帰れと言う。
「そう言う君はどうなんだ?」
「は・・・?」
「俺にそう言う前に君こそ家に帰った方がいいんじゃないのか。キラがあんなに心配してるのだから、親だってそうだろう?」
急に話題を自分にふられてカガリは最初アスランの言ってることが理解できなかった。
はぁと息を吐いたアスランの厳しい視線がカガリを見据える。
「・・・人の心配をする前に自分のことをどうにかした方がいいんじゃないか?」
アスランは苦笑しながらそう言うと、ゆっくりと歩き出した。
学校に遅刻しようが、誰に何を言われようがもうどうでもいい、そんな足取りだ。
後ろから追ってくる気配は無かった。
その代わり、震えた声がアスランの耳に入る。
「・・・っ、帰る家があるなら・・・とっくに帰っているっ!!」
くっ、と何かを耐えた声が聞こえて、小さな靴音は後ろに遠ざかって行った。
つづく
★
学パロ・・・?
これは学園パロディではないのか・?!
そんな声も聞こえてきそうですが。
「俺に意見する前に、自分はどうなんだ?」という冷たいアスランを表現したかったのですがぁ
ヽ(`Д´)ノ能力不足じゃー
喧嘩?した、ということは・・
仲直りですよねー☆
ではでは。
また。
キーワード: 学パロ
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