翌朝、カガリが目覚めるとキラの姿は無かった。
キラはカガリの知らないうちに家に帰ったようだ。
テーブルの上にはメモが置いてあった。
“料理美味しかったよ、ごちそうさま。月曜日また学校でね。”
「キラ・・・」
昨夜、シャンパンを飲みながら離れて暮らしていた間のことを語り合った。
父とカガリにあんなことが起きなければ家族4人で仲良く暮らせたはず。
(運命を呪ったって時間が戻るわけじゃないしな… キラと再会できただけでも奇跡なんだから… ん…?)
カガリがメモを見つめて考えていると、玄関の方からドンドンと音が聞こえた。
音に混じって女性の声も聞こえる…
(なんだ?… )
カガリは玄関のドアを少し開けた。
廊下にいる人物は隣のドアを叩いている。
「アスラーン、いないのー?」
(あっ・・)
カガリは思わず声を上げた。
いつか廊下で出会った赤い髪の・・
「もうっ、こんな時間でもいないなんて・・・。あ、あなた・・」
「な、何してるんだ?こんな朝から・・」
ドアの隙間からこっそり覗いていたカガリは相手と目が合うと、不思議そうに尋ねる。
「ここの部屋の人に会いに来たんだけど・・・何度呼んでもいないのよ・・」
カガリは聞かれてやっとアスランが留守だった事を知る。
昨日はキラが自分の部屋に来ていたから、ばったりと会うことも懸念したかもしれないが、まさか部屋にいないなんて・・・
(帰って来てないのか・・?キラが来るからってそこまで避けなくても・・)
カガリが視線を落として考えを巡らせていると、いつの間にか目の前に顔が近づいてきた。
「うゎぁ!」
「あなた・・ どこかで見たことあるのよね・・」
赤い髪の少女は、くりんとした瞳でじっとカガリを見つめる。
顔がさらに迫ってきてカガリは後ずさる。
「えっと・・人違い・・じゃないか・・?!」
「そうかしら・・・ 絶対どこかで・・」
「い、今はわたしのことじゃなくて・・・」
明らかに動揺しているカガリは怪しげに見つめられる。
そんな時だった。階段の方から少年の声が聞こえて、少女はその声に反応して振り向いた。
「ルナ、なにしてんだ? 兄さん、いたのか?」
機嫌が悪そうに歩いてきた少年を少女の肩越しに見て、カガリは目を見開いた。
黒髪の少年の姿はカガリの記憶に新しい・・・
「シン!」
「え・・?!」
カガリの高い声に少女は驚いてもう一度振り向いた。
一方、名を呼ばれた少年はカガリの姿を確認すると、すっとんきょうな声を上げた。
「はぁ?!カガリ?!なんでここに・・?」
「シンこそなんでここにいるんだ?!」
「俺は兄さんを・・・」
「兄さん・・?シンにお兄さんなんていたのか?!」
「カガリこそどうしてこんな所に・・?」
カガリとシンと呼ばれた少年の会話に赤い髪の少女があっけにとられていた。
少しの間、再会した二人の雰囲気に飲み込まれていたが、すぐにハッとする。
「ちょっとちょっと、なんでシンが知ってるのよ・・?」
つんつんと少年の腕をつついて少女が小声で尋ねる。
「ルナだって、知ってるだろ。カガリだよ、カガリ・ユラ・ア」
「あーーー!!」
思いきり指をさされるカガリ。
「そうよねー、どっかで見たことあると思ったんだー ふーん・・」
「カガリ、こいつはルナ。同じ学校だったから、見たことあるかもしれないけど・・」
「あ、うん、なんとなくそうかなって・・」
旧友と思わぬ場所で出くわしたカガリが、今の自分のことをどう伝えようか迷っていると、アスランが制服のまま何食わぬ顔で帰って来た。
「・・・一体、廊下で何をしてるんだ。」
「アスラン!どこ行って・・」
詰め寄るルナをするりとかわして、部屋に入ろうとするアスラン。
そんなアスランを鋭いシンの声が呼び止めた。
「ちょっと待てよ!いつまでこんな所にいるつもりだよ!!アンタは!」
張り上げた声はマンション中に響くほどで、カガリは突然のことにびくっと体を震わせた。
「シ、シン!ちょっと・・」
抑えようとするルナの手を振り払ってシンはアスランに向かって叫び続ける。
「アンタのことずっと、母さ・・レノアさんは心配してるんだよ!!」
部屋に入ろうとして動きを止めたアスランはシンの叫びを微動だにせず聞いている。
「今だって、こんな時間に帰ってきたりして!・・アンタがそんなだから・・!!」
ゆっくりとアスランが振り向いてシンを見る。
翡翠の瞳は細められて、冷たく・・どこか淋しそうで・・
「俺はもういいんだ・・関係ない・・・ 帰れ。」
「な?!なんだよ、それはっ!!」
興奮したシンがアスランに掴みかかろうとする。
とっさにカガリがシンを止めた。
「ちょっ、やめろってシン!急に・・」
「そうよ、シン。ちゃんと話をしたくて来たんじゃないの?!」
「そうだけどっ!アスランが・・・」
シンは本来の目的を思い出して体の力を抜いた。
「とにかく・・・ 話をしに来ただけだから。アスラン、入れてくれるでしょ?!」
アスランの返事は無かった。
ルナとシンは無言のまま部屋に入ったアスランにつづいて、部屋に入っていった。
一人、廊下に残されたカガリはあまりの突然のことに頭がついていかない。
(シンとアスランが兄弟・・?!それに家がどうとか・・・)
カガリはそっと部屋に戻った。
一体、隣でどういう会話が交わされているのか・・・
他人である自分が入り込めない空間であることを感じ、
なぜかもどかしく思った。
つづく
★
謎が多い学パロですね。
すみません。。。。
最初からくっついてるアスカガも好きですけど、この話では、お互いの存在をじわじわと感じるようになっていく。そんなアスカガ目指してます。
久しぶりの更新です。
書いて楽しかったです(久しぶりだから♪)
つづきも頑張ります。
(ほかの話も頑張ります・・・)
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